「第三回国際道教フォーラム」11月25日スピーチ


早島妙聴住持道長

道家道学院学長
一般財団法人日本タオイズム協会理事長
世界医学気功学会副主席

日本道観創設者、早島天來のもとで31年来修行をし、実地で、導引術、動功術、洗心術の修行を重ねる。日蓮宗身延山にて修行し、僧侶として教師資格を取得。1999年6月、日本道観副道長、道家 <道>学院副学長に、2017年2月、日本道観道長、道家<道>学院学長に就任。
2004年、嗣漢天師府第六十四代より道士の允可を受け、六十四代の嗣漢天師府顧問に就任。2010年、世界医学気功学会副主席に就任。
2013年、一般財団法人日本タオイズム協会設立、理事長に就任。

大家好,我是日本道家协会的早岛妙听。
このたびは,中国宗教文化交流協会王作安会長、中国道教協会任法融会長、よりご招待いただき心より感謝申し上げます。
本日ここに中国 そして世界の道教研究の先駆者の皆様の前でこうして発表する機会をいただけましたことに心から感謝いたします。

人類の未来を予感させるような異常気象が続いている。 この現象は日本だけではない。 現在世界中で、これまでに記憶にないような豪雨、竜巻、大型台風、豪雪、高温、低温、干ばつなどさまざまな異常気象が発生し、人類の生存を脅かすような脅威となっている。 また、エボラ出血熱、デング熱など、近年重篤な感染症が、世界中に広がろうとしている。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が高いと結論づけた。
環境破壊により、多くの種が絶滅に追いやられている中で、私たち人間だけが特別に守られて生きることは出来ないことを、認識すべきときが来ている。
そして、人類も宇宙の一部であり、人体も自然の一部そのものである、というタオイズムの考えに立ち、自然を変え、その調和を破壊するということは、すなわち人間の心と体を傷つけることであり、人類の生存の危機を招き、人類の破壊につながることを認識しなければならない。

人類の明るい未来のために、われわれは生き方を速やかに転換しなければならない。
ではどの道に進むのか、どう方向転換すれば良いのか、その答えは古代中国に生まれた人類最高の叡智である、「道」TAOの哲学にある。 古代中国に生まれた哲学が、なぜ現代の、人類未来への解答になるのか? それは、「道」TAOが宇宙の原理原則であり、人間の頭で考えた哲学ではないからなのである。 「道」TAOは、人間が天地自然から、そしてより広く宇宙から学んだ法則であり、真理である。
古代中国の人たちは、人間社会に起きることだけでなく、人間の肉体や心、そしてそれをかこむ自然や、宇宙をも観察し、この世の中に起こる自然現象もふくめて、すべての出来事を導いている、ある法則があることを発見し、その法則に「道」TAOという名前をつけた。

天地自然に添って、積極的に宇宙と共に生きる、つまり宇宙の原理原則「道」TAOに添って生きることである。 上から下へと自然の法則に添ってよどみ無く流れる水のように、自分自身を養生しながら、天地自然の流れに添って生きる、無為自然の生き方をすべきなのである。 そして毎日の生活を、自分自身で養生しながら、「道」TAOを実践するのである。
これが「TAO Life」である。
これこそが人類の未来を考えるときに、唯一残された、最も身近にある、明るい未来への道なのであると思う。 人間だけの利益を追求する知恵を構築するのではない。
TAO Lifeとは、宇宙の原理原則に添って生き、
足るを知って、限り無い欲望に翻弄されることなく、
心身を天地自然に調和し人類だけでなく、宇宙に存在するすべてのものと調和し共生する生き方を実践する。

道家、道教の養生によって無為自然の心と体を保つことで、人間至上主義の考えを脱出し、
宇宙と共生する積極的な生き方である。
予測不可能な天災の脅威に恐れ、消極的になることなく、日々を楽しく積極的に生き抜く、タオイストの未来にむけた生き方なのである。
道家道教の気のトレーニング(導引、気功、静坐法)によってこそ、人々の体を無為自然に保つことができる。
そしてこれは、人間が環境破壊の手を緩める生き方への転換ではなく、人間そのものが無為自然に回帰し、道に調和する存在に変わることを決意する生き方なのである。

この現代の異常気象の問題を考える時に、私たち人類は歴史の中で、温暖化や寒冷化の時代をすでに力強く生き抜いていることを思い出す必要がある。人類はこれまでいかなる時代も力をあわせて生き抜いて現代に至っているのである。
日本も平安時代には温暖化の時代を超え、江戸時代には寒冷化の時代を生き抜いて来た。
日本には道教という宗教は伝来していない、と長く信じられていたが、実は九州の長崎県に江戸時代、「崇玄観」という道観を建立し修業した大江宏隆というタオイストが実在していたのである。そして彼(大江宏隆)は玄武をまつり、タオイズムの修練をしていたと記録されている。
日本において古来中国から文化を通して学び続けたタオイズムは、日本人の本質である自然とともに生きるという生き方見事に融合し、江戸時代には広く需要されていたのであろう。

早島天來は生前 TAOを学んだ喜びと感謝について次のように書き残している。
「TAOに巡り会うまでは私の人生は、 心もそして生き方も貧しく不幸だった。だがTAOに巡り会って心も体も豊になり、本当に幸せになった。また私を通じて日本でTAOを学び沢山の人が健康に幸せになった。このご恩を、このタオイズムを産み出し残してくれた中国の人々に、いつか時がきたらお返ししたいと思っている。」
そして、人間もその法則に添って生きることによって、この宇宙のすべてと調和し、最も健康的で自然に添った、幸せな人生が送れることを説いた。
私はこの早島天來の遺志をつぎ、中国の皆様への感謝を忘れずに、世界にこの古代中国に生まれた叡智を伝え、現代によみがえららせるTAOLifeを発信してまいりたいと思います。
そして、道家、道教に伝わる修練を、現代に広く伝えることは、その恩恵をうけている我々タオイストが、来る人類未来に貢献するための非常に重要な使命である。

そしてこれからの指導とご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

早島天来創始は日本道観の創始者であり、中国とタオイズムについての熱い想いを書き残されていました。

「第三回 国際道教フォーラム」発表論文  2014年11月25日

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